2018年の厚生労働省の統計データによると、 ここ25年の間に持家世帯比率の推移が大きく変化しています。

このような数字を紐解くことで、住宅購入層の心境の変化や時代背景などを追いかけるとともに、マイホームを購入したい人はどのようなことを意識すればよいのかを提言していききます。

持ち家世帯は減少の一途をたどっている

厚生労働省が公表した「図表1-8-6持家世帯比率の推移」(総務省統計局「住宅・土地統計調査)」によると、1983年から2018年の間に、随分と持家比率が下がっているのが見て取れます。

30歳未満では、1983年に17.9%あった持家比率が2018年には6.4%まで減少、特に1983年から1993年までの10年間においては、約10ポイント近く下落しているのが分かります。

30~39歳の世代においても同様で、1983年には53.3%(2人に1人は持家)だったのが、2018年には35.9%と17.4ポイントも下落、同様に1993年までの10年間で10ポイント近く下落しています。この世代の下落が特に顕著で、2人に1人は持家だった1983年と比べて、2018年は、約3人に1人の持家比率まで下落しています。

他の世代も同様で、1983年と比較して2018年の持家比率は下落傾向にあります。

唯一、1983年と比べて、上昇しているのが60歳以上の世代ですが、上昇は0.12ポイントと実質的に横ばいになっています。年齢が上がると、親からの相続なども発生してきますので、この数字だけで推測する限り、マイホームを購入する人の数は年々減少傾向になるものだと推測されます。

このようなデータを見る限りでは、住宅の購買意欲が落ちているのだと推測できますが、私はそれだけではないと考えています。

マイホームの購入しない人が増えた要因を考えてみる

マイホームの購入意欲がない人が増えた要因を考えてみる

約30年でマイホームの所持率は大きく減少しています。

これに関しては、大きく2つの要因が考えられます。

1つ目は「晩婚化」が進んでいること。2つ目は「終身雇用制度」の崩壊、3つ目は「インターネットやSNS」の普及です。

晩婚化が進むことでマイホーム購入世帯が減少

人口統計資料によると、全国の平均初婚年齢は、1980年では男性27.8歳、女性25.2歳でしたが、2018年では男性31.1歳、女性29.5歳で、5年近くも晩婚化しています。

とりわけ、東京を中心とする首都圏では、年齢の数値は高くなり、都心部での晩婚化が進んでいます。男性で唯一20代は宮崎県で、女性では唯一東京都が30代に突入しています。

マイホーム購入を検討するタイミングとしては、結婚や出産といった人生の節目となることが多いため、晩婚化が進むことで必然的に各世代での持家比率は減少しています。

インターネットやSNSの普及で人間関係の接点が多様化している

最後は、インターネットです。

インターネットの普及は、様々なことを変えた気がします。人生における「楽しみ」や「目的」が多様化してきました。

これまでは、人生の最大の目的はマイホームを購入することでした。そして、マイホームを中心とした生活が展開されていましたが、現在は、インターネットの普及により、人生における目的が、多様化しています。

インターネットの普及は、確実に私たちの意識を分散させていて、それが持家比率の結果につながっているものだと思われます。

終身雇用崩壊の不安からマイホーム購入に踏み出せない

働き方の変化や就労環境の変化もマイホーム購入に大きな影響を与えています。

1980年代~1990年代にかけての日本は、終身雇用を前提とした就業モデルが根強く残っていました。賃金も、勤続年数に応じた定期昇給が前提となっていたため、サラリーマンにとってはライフプランが立てやすく、マイホーム購入も現実的なプランとして織り込むコトができました。

しかし、2000年初頭から現在に至るまで、転職が当たり前で、終身雇用を前提とした働き方は、非常に珍しいケースになってきました。

そうした時代背景も相まって、人生設計の中における、マイホーム購入計画の優先順位が明らかに下がってきたのです。

お金の使い方も多種多様になり、自己投資や交際費、レジャーや観光、インターネット関連などへの出資が優先され、極端な話ではありますが、マイホーム購入のための資金は後回しになってしまうのです。

このような『終身雇用の崩壊』といった働き方の変化が、晩婚化の原因や人間関係の希薄化にもつながり、結果的にマイホームの購入まで考える余裕が無くなってしまうのです。

何だかんだ言っても大半の人はマイホームが欲しい

マイホームはリスクだ。マイホームは借金に縛られる。マイホームは自由が効かない。このような『マイホーム不要論』をよく聞きますが、これまでの動きに対しての反論になりますので、非常に大きな注目を集めることができます。

さらに、このような考え方は時代の最先端な考え方になりますので、メディアなどを通じて、声高々に叫ばれます。それが、マジョリティな考え方だと、とらわれがちですが、そんな事はありません。

今更『マイホーム必要論』を叫んだところで、新鮮さもありませんし、斬新な要素はこれ一つもありません。なので、マイホーム必要論者は事態を静観しています。

何だかんだ言って、多くの人は「マイホームが欲しい」と考えています。

絶対に欲しくない人などほとんどいないと思います。手に入れられるなら、手にしたいと考えているのです。

『マイホームが欲しい!』どうしたらいい?

一昔前と比べて、住宅ローンの金利は低くなり、考え方によっては、お金が借りやすい環境は整っています。

それでも上述した通り、様々な不確定要素があるため、なかなかマイホーム購入に踏み切れないのでしょう。

私が、アドバイスできるとすれば、資産運用などを通じて、収入の柱をなるべく早い段階から用意しておくことです。

定期的な昇給が見込まれないのであれば、自分自身で収入を増やすための努力をするべきです。

また、可能であれば住宅購入価格の30%の現金は確保しておくべきです。建築費の30%でも構いません。

そうする事で、万が一住宅ローンが払えなくなった場合でも、売却や賃貸などのリカバリーが効きます。

住宅ローンの審査に関しては、会社員であることは非常に有利に働きます。その辺りのアドバンテージも有効活用しましょう。

このように、マイホームご欲しいあなた、将来は自分の家を持つんだろうな、と考えている方は、ぜひ自己資金を増やすための準備をしておきましょう。

外部環境のせいにすることは簡単です。このような状況下でも、あなたの目標は叶えることは十分できるのです。